Making Sense: The Glamorous Story of English Grammar

デイヴィッド・クリスタル(著)伊藤盡・藤井香子(訳)『英文法には「意味」がある』(大修館書店、2020年)

本書は、David Crystal著のMaking Sense: The Glamorous Story of English Grammarの邦訳です。扱う内容は、誰もが高校卒業ぐらいまでに習得する一般的な文法知識に関するものですが、品詞などの一般的な分類方法を使用せずに、日常的なフレームワークを意識して分類し、「お話し仕立て」にしているところが本書の面白さとなります。

たとえば、最初のセクションは「文法、はじめの一歩」というタイトルで始まります。子供が言語を習得する「はじめの一歩」を扱いながら、「文」とは何か、という文法の基本となる事柄を掘り下げていく仕組みになっています。

やさしい語り口で読者に文法についてもう一度考え直す機会を与えながら、各所にキーワードを配置し、このキーワードによって本書が少し専門性を帯びる構成になっています。キーワードには、たとえばmetalanguage, prescriptive, pragmatics, hypercorrectionなどが含まれています。言語を科学的に観察するトレーニングを受けた人ならだれでも聞いたことのあるキーワードばかりですが、英語の語学的な習得を目的にのみ文法を学んだ人にとっては、次元が少し上がった感じがするでしょう。

さらに各所に閑話休題が配置されています。ここでは、最初期の綴り字改革者であるWilliam Bullokarが登場したり、20世紀の前半に英語学研究の基礎を気づいたOtto Jespersenが登場したりします。ここまでくると、英語学、あるいは英語史の知識を再確認する段階に入ります。

このような工夫が、本書を結果的にどのような読者層にも、読み応えのある著書にしています。日本語訳も大変工夫されていますので、日本語で一気に読んでしまうというのも、本書の軽快さを感じ取るのによいと思います。