技能、システム、モード

金出武雄(著)『素人のように考え、玄人として実行する』(PHP文庫、2004年)

創造力、説明力など研究に必要な「技能」を分析的に扱った本です。日米の研究モードの比較などもあり、興味深く読みました。文化は発信することによって守るという攻めの姿勢や「知的体力」という考え方が印象的です。(2012年)

以下の部分にも、研究に必要な美学が表現されています。引用します。

「研究開発は構想力が決め手になる。砂を多すぎず、少なすぎず、どういう形にすくうかは、まさに芸術であり、科学者の審美眼である。言葉ではなかなか教えられるものではない。いい先生のそばで見て覚える部分がかなりある」(p. 72)

目次にも多くの情報が含まれているので、すべて書き出してみます。

創造へのいざない

第1章 素人のように考え、玄人として実行する — 発想、知的体力、シナリオ
1. 遊び心の発想
2. なんと用地な、何と素直な、なんといい加減な考えか
3. 成功を疑う
4. 創造は省略から始まる
5. 物事を推し進めるためには、シナリオをつくる
6. シナリオのキーは、いかに人や社会の役に立つかである
7. 創造力とは、問題を限定する能力である
8. キス・アプローチ — 単純に、簡単に
9. 知的体力 — 集中力とは、自分が問題そのものになること
10. できるやつほど迷うものだ
11. 「できない」から次が始まる
12. アイデアは「人に話して」で発展する
13. 私の原体験をこじつける
14. 「玄人発想、素人実行」 — これはまずい
15. 独創、創造に関する三つの反常識的説

第2章 コンピュータが人にチャレンジしている — 問題解決能力、教育
16. コンピュータが人にチャレンジしている
17. 人もコンピュータも計算する機械である
18. 人とコンピュータは違うか
19. コンピュータは人より知能的になる
20. 思考力、判断力は問題解決に挑戦することで伸びる
21. 例題を考え、解くことが理解を深める最もよい方法である
22. 考える力を育てる教科書の記述法
23. 創造力、企画力の土台となる記憶力
24. 思考力、記憶力は、繰り返しやることで伸びる
25. 異なるジャンルの人と知的に対決
26. ゆとり教育と詰め込み教育を弁証法的に考察する

第3章 「自分の考え」を表現し、相手を説得する — 実践! 国際化時代の講演、会話、書き物術
27. 説得する — 黙っていてはわからない
28. 前置きなしに話す — こう言えば、ああ思う
29. 結果は説明ほどにものを言い
30. 説明sh知恵納得させるのではない。納得させてから説明するのだ
31. 人と話をする時に、相手の目を見て話す — 自分の話に自信があるか
32. ほめて伸ばす。争点を明らかにして話す
33. たとえと例は違う
34. 英会話は、「外国人にしてはうまいな」と思われるぐらいがちょうどよい
35. 実践! 英会話上達の秘訣 — 早口で、大きな声でしゃべり、頭を空にして聞く
36. 論文や人を説得する書き物は推理小説と同じである
37. 「起承転結」のコンビネーション(1)
38. 「起承転結」のコンビネーション(2)
39. プロポーザルは論文プラス資金の要求だ — 相手が上司に説明しやすく書く
40. 発表と英語に関する三つの変なアドバイス

第4章 決断と明治のスピードが求められている — 日本と世界 自分と他人を考える
41. 日本に求められるのは、「知のスピード」である
42. インターネットの価値 — より多くの広い範囲の人と仕事
43. 「自分がどう見られるか」の脅迫観念と存在感
44. 日本独自をかくれみのにしない
45. 人を引っ張るリーダーシップ
46. うまくいかない時もある — あっさりと方向転換しよう
47. 評価とは本来主観的なものである
48. 「自分が決める」という勇気

おわりに — 楽しく問題解決を

枝廣淳子・小田理一郎(著) 『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?』(東洋経済新報社、2007年)

つい身近な解決策や、何も変えずに今までやっていたことをさらに頑張る、という方向に行ってしまいがちなところで、本書はさまざまな気づきを与えてくれると思いました。

「学習する組織」という見方が面白いと思います。個人の視点からというよりも、全体を見渡すような視点を外側に設定することで、解決の糸口が見えてくるのだろうと感じました。(2015年)

以下は、システム思考の特徴をよく表した文章だと思います。引用です。

「システム思考は、『人を責めない・自分を責めない』アプローチです。あるシステム構造のせいで問題が起こっているとしたら、たとえ担当者を入れ替えても、組織のトップの首をすげ替えても、同じ問題が起こるでしょう」(p. 43)

目次も詳しいので、以下に載せておきたいと思います。

序章  小さな力で大きく動かそう!
第1章 システム思考とは何か? — よいパターンを創り出す究極のツール
第2章 システム思考は難しくない! — 世の中はシステムだらけです
第3章 「時系列変化パターングラフ」が望ましい変化を創り出す
第4章 最強ツール「ループ図」を使えば構造が見えてくる!
第5章 強力な助っ人「システム原型」で現実の構造を見破る
第6章 絶妙のツボ「レバレッジ・ポイント」を探せ! — 小さな力で大きく変える
第7章 いざ、問題解決へ! — 望ましい変化を作り出す
第8章 システム思考の効用と実践手法 — こんな場面で役に立つ!

 システム思考の効用① 「人や状況を責めない、自分を責めない」アプローチ
 システム思考の効用② 視野を広げ、従来の「思考の境界」を乗り越えられる
 システム思考の効用③ 無意識の前提を問い直すことができる
 システム思考の効用④ 問題解決に役立つ時間軸を考えることができる
 システム思考の効用⑤ 問題解決につながるコミュニケーションが可能に

第9章 最強の組織を作る! — 変化の時代に必須のコンピテンシー
第10章 システム思考を使いこなすコツ — 実践のための7ヶ条
補論  システム思考をより深く知りたい人のために — システムの特徴

 特徴① ストック&フロー
 特徴② フィードバック・ループからできている
 特徴③ 時間的遅れ
 特徴④ 非線形的変化

あとがき