分野をつなぐ共通のテーマ
住吉誠・鈴木亨・西村義樹(編)『慣用表現・変則的表現から見える英語の姿』(開拓社, 2019)
慣用表現・変則的表現も、複数の分野で共通に議論できるテーマの一つです。本論文集では、語法研究、コーパス言語学、認知言語学等の視点から、複数の研究者が慣用表現のあり方について議論します。序論にあるように「慣用」をやや広めに捉えたとこが特徴的で、包括的な視点を扱う論文集となっています。序論の関連の箇所を引用してみます。
「『慣用』をより柔軟にとらえれば、いわゆる熟語や慣用句だけでなく、語の慣習的使用法、コロケーション、複数語の連鎖、補文、(構文文法でいう)構文、語用論的慣用、名詞の出現位置とジャンルの相関性など、様々な現象をその研究対象に含めて考えることができる」(p. 3)
ブログの管理者である家入もコーパス言語学の手法を用いながら、rumorという語の使い方について議論をした論文を寄稿しました。その他の論文も含めて、以下に目次を掲載しておきたいと思います。(2023年)
目次
まえがき
第I部 序論
第1章 慣用表現・変則的表現はどう考察されてきたか(住吉誠・鈴木亨・西村義樹)
第II部 変容する現代英語の語法
第2章 現代アメリカ英語のrumor — Corpus of Contemporary American Englishの分析から –(家入葉子)
第3章「懸念」を表すfearについて(五十嵐海理)
第4章 句読法から語用論標識へ — Periodの談話機能の発達と今後のアメリカ英語について –(柴崎礼士郎)
第5章 動詞のパタンに見られる変則性(住吉誠)
第III部 慣用表現の成立と文法
第6章 慣用表現 “if X is any indication [guide]”について(平沢慎也)
第7章 使用基盤モデルから見たmake/let使役構文(西村義樹)
第8章 結果構文の強意読みと慣用表現(都築雅子)
第9章 断定のモダリティ表現”it is that”の特性(八木克正)
第IV部 構文の意味と慣用の拡がり
第10章 three brothers and sistersの不思議(小早川暁)
第11章 活動動詞を含む属性評価文の拡張と両義的解釈(鈴木亨)
第V部 言語使用における慣用と変則
第12章 コーパス解析に基づくテキストジャンルと名詞の用法の関係性(後藤章一)
第13章 フィクションのテンスとダイクシス(内田聖二)
執筆者紹介
『語法と理論の接続をめざして』金澤俊吾・柳朋宏・大谷直輝(編)(ひつじ書房、2021)
ひつじ研究叢書の173です。タイトルからもわかるように、そもそも分野間の接続を意図して編纂された論文集です。I. 意味論、II. 英語史、III. 統語論、IV. 形態論、V. 談話分析という構成になっていることからもわかるように、通時的、共時的、そしてさまざまな分野の研究を収録しています。ただし、対象として扱う言語は、基本的に英語です。以下に目次をあげておきたいと思います。
目次
はしがき
I. 意味論
感情表出の表現・行為を表す二重目的語構文 — 再帰代名詞を伴うallow/permitの事例研究(植田正暢)
前置詞の補語位置に現れる前置詞句の補語句用法について(大谷直輝)
Way構文における現在分詞による修飾について(金澤俊吾)
英語における主語省略と主語の「指示性」との関係について(柴田かよ子)
認知文法から見る余剰take構文(平沢慎也)
Cut動詞と道具・場所交替 — 語彙・構文アプローチの観点から(藤川勝也)
II. 英語史
セッティング主語構文が描く場面 — 通時的考察(石崎保明)
Caxtonの翻訳英語に見るupとdown(内田充美・家入葉子)
能格動詞breakの史的発達 — 中間構文に至るまで(久米祐介)
否定分離不定詞の変遷 — 1990年代から2010年代における話し言葉の分析を通じて(廣田友晴)
III. 統語論
自動詞の非定型補部の用法について(袴木勇作)
英語における形容詞の統語的一と意味解釈に関する考察 — ラベル決定アルゴリズムと主要部配置条件の観点から(岸浩介)
提示的関係節構文の統語構造について(松山哲也)
IV. 形態論
句から語へ — 複合不定代名詞の語彙化(再)分析(縄田裕幸)
「疑似不定冠詞」の歴史的発達 — 形態的融合と統語的効果(柳朋宏)
V. 談話分析
直接話法におけるaskと疑問符(木山直毅)
連結詞的近く動詞構文の談話標識化 — 現代アメリカ英語における調査(中村文紀)
索引
執筆者紹介