研究のデザイン

細川英雄(著)『研究計画書デザイン』(東京図書、2006)

日本語教育を専門とする著者が、大学院を目指すところから、実際に大学院生となったときにどのように研究を進めてどのように論文を書くか、というところまで丁寧にプロセスを解説した著書になります。

この種の本を書く場合には、できるだけ多くの分野の人に読んでもらえるように、という要請を出版社から受けて、内容を薄めてしまう傾向があるのですが、本書は、ターゲットをしっかりと絞ったまま最後まで書き進められているので、大変具体的に研究のイメージをつかむことができます。同時に、内容は日本語教育に特化したという印象があり、他分野の人には少し応用しにくいと感じるかもしれません。

とはいえ、多くの分野の研究者が共通に考えることができる視点も多く含まれています。たとえば、以下のような記述は印象に残りました。

「その際、データの収集と検討がそのもっとも重要な証拠になりますから、固有の調査・研究に基づくことが不可欠です。先行研究も大切ですが、研究の価値として優先するのは、やはり固有のデータです。固有のデータを持たない研究は、評論と特別がつかなくなりますし、状況証拠としての先行研究だけでものをいうのはとても危険です。」(p. 54)

「つまり、一人ひとりのオリジナリティとしての固有性を、どのようにして他者と共有するか、ということです。どんなに優れた固有性のつもりでも他者と共有しなければ、単なる独りよがりにすぎませんし、固有性のない共有だけでは、個人の顔の見えない、中身のないものになってしまいがちです。」(p. 93)

関連図書

本ブログの管理者である家入も以下のような図書を執筆しています。ご参照ください。