意味への関心 — タルミー

レナード・タルミー(著)『認知意味論を目指して III』(開拓社、2024年)

本書は、Leonard Talmyの著書、Toward a Cognitive Semanticsのvol. 2の序章とChapter 1, Chapter 2を翻訳したものです。少しわかりにくいですが、日本語では分冊で翻訳が出ている関係で、日本語タイトルでは『認知意味論を目指して III』となっています。

Toward a Cognitive Semanticsは、Talmyがこれまでに公刊してきた研究を再編集して2冊にまとめたもので、日本でも広く知られ、またそれを発展させる形での研究が進んでいる理論的枠組みを含んだ内容となっています。

とりわけ様態を表す動詞が移動を同時に表現することができるかという点から世界の言語を分類する試みは、広く研究者の関心を呼ぶ話題で、本書でもかなりの紙幅を割いて解説がなされています。英語のThe ball bounced down the hall (p. 41) に対する、スペイン語のLa botella entró a la cueva flotando (p. 58) としてしばしば議論されているものです。

複雑な議論を日本語で読むことができるのはありがたいことだと思います。それでも世界のさまざまな言語についての知識(あるいは関心)が多少は要求されるという意味で、少し難解なところもあるかもしれません。(2024年)