言語のバリエーションにかかわる要因は普遍的か
L. De Cuypereは、”The Old English Double Object Alternation: A discourse-based approach” (2010) において、いわゆるdative alternationと言われる現象を扱い、現代英語で言われている構文選択の要因が古英語にも当てはまるかどうかを調べました。
dative alternation とは、いわゆる2つ目的語を取ることのできる動詞、たとえばgive, sendなどが、二重目的語構文になるか前置詞toを用いた構文になるかという交替現象のことを言います。
De Cuypereは、現代英語の先行研究、特にThompson (1995) から以下の二つの仮説を紹介し、これを古英語のコーパスで検証します。
仮説1:’Recipients [in our case DATs, LDC] tend to be placed before patients [accusative objects] because recipients are more ‘topicworthy” than patients. …’ (p. 342)
仮説2:’Recipients [DATs, LDC] in the poswerbal position, i.e., immediately following the verb, are more topicworthy than recipients [DATs, LDC] occurring in the end position. … ‘ (p. 342)
結論から言うと、仮説1は古英語にも当てはまることが証明されましたが、仮説2は証明できませんでした。英語は語順がその歴史において大きく変化した言語ですから、語順がかかわる研究の場合には、少し工夫が必要なのか、あるいは普遍性というのがそのままでは当てはまりにくいのか、などいろいろな背景を考察することができます。
しかし、topicworthyであるかどうかを検証するために使ったさまざまな因子、animacy, pronominality, specificity, identifiability, proper-nounhood, givennessについては、応用できるものも少なくないと感じました。
参照文献
- De Cuypere, Ludovic. 2010. “The Old English double object alternation: A discourse-based account”. Sprachwissenschaft 35: 337-368.
- Thompson, Sandra A. 1995. “The iconicity of ‘dative shift’ in English: Considerations from information flow in discourse”, in Syntactic iconicity and linguistic freezes, ed. Marge E. Landsberg, pp. 155-175. Berlin: Mouton de Gruyter.