Polysemyとhomonymy

Polysemyとhomonymyは、少し混乱しやすい概念です。Christian Kay and Katheryn Allan, English Historical Semantics (Edinburgh University Press, 2015) の説明が分かりやすいので、ここに紹介しておきたいと思います。

Polysemyの方は、”meanings can be traced back to a single source” (p. 35)というところがポイントで、homonymyの方は、”two words share the same form, but go back to quite different roots” (pp. 35-36) というところがポイントになります。

つまり、形が同じでもその語の語源についての知識が必要になりますので、問題がやや専門的になっていくことになります。

この後に同じ著書の中で紹介されている例も分かりやすくてよいです。それによると、rightは「権利」や「右」などさまざまな意味を持っていますが、いずれも古英語のriht ‘law’ に遡りますので、polysemousであることになります。

これに対して、batは「コウモリ」の意味と野球の「バット」の意味がありますが、それぞれ起源を見ると異なる語に行きつきますので、両者の関係は homonymous ということが紹介されています。こちらの方は本来異なる語であることから、辞書の記述としては、異なる項目としての扱いをすることが望ましいことになります。

このように、定義は整理すると分かりやすくなるのですが、実際の運用となると問題がないわけでは、ありません。Christian Kay and Katheryn Allanの同書には、この点についての言及もあります。p. 42の”Homonymy revisited”というセクションに書かれているのですが、たとえば英語のstaffには、「杖」の意味や「職員」の意味など、本当に多様な意味があります。これらがすべて同語源で一単語に遡ることができるので、この語はpolysemousであるということになります。しかしながら、このことを知らない人がいても不思議ではなく、むしろそちらの方が普通ではないかというのです。

こうなると、やはりpolysemyとhomonymyの区別は容易ではないことがわかります。