Linguistic Landscape

言語景観について

最近わりと頻繁に耳にするようになってきたと感じる分野に言語景観(Linguistic Landscpe)という分野があります。看板や案内板の表示など、街の中のあらゆる言語表記が対象になり、その文字、レイアウト、表記内容、などさまざまな側面が研究の対象となるようです。言語が表出するのはたしかに本を含む文献ばかりでありません。街の中のあらゆる生活の場面でどのような表記がなされているかというのは、たしかに面白い研究対象だと思います。

これに多言語という側面が加わると、考えなければならない要素が格段に多元化し、研究としてはますます面白くなるわけですが、一方で、どのようにまとめていくかというところも難しくなるように思います。また看板などの表記は書き換えられていきますので、データをどのように収集し、どのように整理するかだけでもたいへんな作業をともなう仕事になるのではないかと思います。

複数言語で表記がなされている場合、当然ながらそれを読んでもらう対象として多様な言語的背景をもつ人々が想定されていることになります。ですからわかりやすさ、明確さというのが重要な要素になってくるでしょう。読めない文字で書かれたものは意識の中に浮かび上がってきませんので、読める文字で書かれた情報に意識が集約されます。一方で、理解できる文字列が多い人にとっては、多数の言語で書かれた看板は、どの情報にも目が行ってしまい、煩わしいと感じることもあるかもしれません。そのような中で、どのように整理して、明快に、しかも多様な人々に理解できる情報を提供するか、という点を探っていかないといけないのでしょう。

YouTubeの中に福永由佳氏の「多言語化する日本社会を考える─多言語化を的確に把握するための基礎的データの必要性─」(国立国語研究所 オープンハウス2021)がありました。言語景観についての議論も多く含まれています。