YouTube特集 ー 中世写本について

Scripts

  • Uncial Calligraphy (Solis Scriptorivm) — ヨーロッパで広く使用されたUncial体についての解説と実践の動画です。Uncial体が生まれてくる背景に写本の素材の変化や文献のジャンルの問題が関係していたことや、書体としての多様性、その後の発展などが解説されています。1分40秒あたりに、書体間の影響関係の解説があります。理論編は、11分40秒ごろまでで、このあとは実際にUncial体を書いてみることに興味がある人向けの実践編となっています。全体として、一般向けのとてもわかりやすい動画です。
  • Anglo-Saxon Square Minuscule (Daniel Donoghue, Harvard University) — 他の本の製本の材料として再利用されていたためコンディションがよくない写本を見ながら、Anglo-Saxon Squre Minusculeについての解説がなされます。g, r, d, f, s, e, pなど、特徴的な文字についての詳しい説明に加え、他の書体との関係についても触れられています。また、文字だけではなく、内容にも踏み込んだ動画になっています。
  • An introduction to medieval scripts (Smart History) — Caroline minusculeとGothic scripについての比較的詳しい解説がなされています。中間的な特徴なども、写本を見ながら説明されますので、短い動画ですが、とても分かりやすいです。
  • How To Read Medieval Manuscripts Written In Middle English (Middle English Manuscripts) — 前半は中英語の文法等の説明になっていますので、中英語そのものに関心がある場合は、最初から通してご覧ください。写本に特化して学びたい場合は、約8分頃からscriptsの説明、特にゴシックについての説明が始まり、最後にBritish LibraryとParker Libraryの写本に関するサイトの使い方の説明があります。
  • Anglicana Formata (Nicholas Watson, Harvard University) — イギリスの写本でしばしば使用されているAnglicana Formataについての動画です。書体だけではなく、テキストの内容や、スペリングにも踏み込んだ内容で、Nicholas Watson氏の中英語の発音も聞くことができます。
  • How To Read Medieval Manuscripts Written In Humanist Script (And Incunabula)(Middle English Manuscripts) — Humanist ScriptのベースにはCarolingian minusculeがあり、Gothic scriptの影響もあるので、動画の最初の部分で、この2つの書体も復習できるようになっています。書体だけでなく、art historyの観点から、絵の中の人物の表情が変わってくることにも言及がありますし、動画の終わりには印刷技術の導入の話も出てきます。とても分かりやすい動画だと思いました。
  • English and Latin Paleography: An Introductory Workshop (USC Libraries) — ワークショップの動画で、800年~1500年の書体を解説しながら、一緒に写本を読む練習をします。内容は入門的です。ラテン語と英語となっていますが、文字を読むことに専念しますので、ラテン語や中英語がわからなくても、ある程度ついていけるはずです。もちろん言語自体を理解できる方が、解読も楽になりますが。2時間以上の長時間動画ですが、ワークショップに参加していると思えばそれほど長くありませんし、解説の英語がとても分かりやすいので、速度を速めて聞いても特に問題なく理解できると思います。

Folioの考え方

The Structure of a Medieval Manuscript (Getty Museum)では、写本が物理的にどのような構成になっているかがわかりやすく解説されています。Folioの考え方、ページの割付の考え方がよくわかるアニメ動画です。

Illumination

Illuminating the Middle Ages (Chris LeClere) は、中世写本のilluminationに焦点をあてた動画です。英語の写本に限りませんが、illuminationがstatusを示すシンボルとして施されていたこと、マージンの挿絵の中にはとても興味深いものがあることなど、具体的な例をたくさんあげながら解説されています。とてもユーモラスなものもあります。マージンの役割、マージンと製本の関係、写本の時代から印刷本の時代への移行についての解説もあります。

「中世ヨーロッパではなぜ『本』が貴重だったのか?その理由がわかる動画」では、写本の彩色やゴールドを貼る場面の実践を見ることができます。大変細かい作業であることがわかります。解説は英語です。

15th century white vine illumination: painting, applying gold leaf and burnishing (Calligraphy by Moya) でもゴールドを貼る場面を見ることができます。こちらは解説なしで、花のワルツの音楽になっています。

応用編の動画

‘The ABC of Medieval English Writing’ by Daniel Wakelin (University of Oxford) — Daniel Wakelinが2019年にゲストスピーカーとして行ったレクチャーの動画です。内容はなかなか高度で、ABCにはさまざまな意味が込められていますが、メインテーマはアルファベットです。とても珍しい写本がたくさん紹介されています。また、写本のマージンなどさまざまな場所がアルファベットの試し書きや練習に使用されている事例も多数紹介されています。書体についての言及もあります。