初期印刷本 (incunabula)

国立国会図書館のインキュナブラ

国立国会図書館の「インキュナブラ — 西洋印刷術の黎明」のサイトでは、インキュナブラについての解説に始まり、活字の種類、製本に至るまで、初期印刷本についてのさまざまな情報が公開されています。国立国会図書館所蔵の15のインキュナブラの画像も見ることもできます。

印刷博物館

実際に出かけて、展示されている印刷関係の道具等を見ながら印刷の歴史を学ぶのには、東京の印刷博物館(Printing Museum, Tokyo)がお勧めです。常設展だけでも相当見ごたえがありますが、特別企画の展示がされている時期もありますので、ホームページで確認してから出かけるようにしましょう。飯田橋駅、後楽園駅から、徒歩で約10分程度です。アクセスについての情報は、こちら

YouTube — 当時の印刷の様子

  • 印刷技術導入当時の印刷の様子を知るには、Cambridge University Libraryの動画、「15世紀の印刷ワークショップ」がよいと思います。短い動画ながら、当時のもを再現した印刷機で印刷をしながらの解説で、分かりやすいです。割付を間違えたシートなど、珍しい資料の紹介もあります。
  • Folger Libraryの動画「印刷101」は、初期近代英語の印刷の様子を解説したものです。活字を拾って印刷機にかけるまでのプロセスがとても分かりやすいので、こちらの動画もおすすめです。
  • How a Gutenberg printing press worksも比較的わかりやすい動画です。インクを組版の上に乗せていく様子などをゆっくりと実演してくれます。

YouTube — 初期印刷本の具体例

15世紀から16世紀へ

1500年を一つの区切りとしてインキュナブラという言い方をします。しかし16世紀もまた、印刷本の歴史の中では興味深い時代だと言えます。D. J. Shaw の “The Book Trade Comes of Age: The Sixteenth Century”, in A Companion to the History of the Book, ed. Simon Eliot and Jonathan Rose (2020) は、16世紀に焦点を当て、その中で当時の本の制作について、以下のような記述をしています。

“So far as we know, the technology of printing was essentially unchanged from that of the incunable period, but its practitioners were tending to specialize more: punch cutting and typefounding in particular, and also bookbinding in the larger centers. Papermaking and distribution had always tended to be in the hands of separate tradesmen. The physical appearance of texts on the page did undergo changes, which gradually gave the printed book a more modern and less medieval appearance. One of the main developments was the emergence of the title page, partly for practical reasons to protect the opening page of the text from wear and tear and partly for advertising reasons: the title of the book and the name and location of its producer could be displayed prominently on this otherwise blank first page (Smith 2000). Another development of the modern page layout was the introduction of page numbers, which did not really become common until the early sixteenth century. This went hand in hand with the development of indexes in scholarly works: without a page number, an index reference or a list of errata is very difficult to use.” (p. 395)

タイトルページや、ページ番号などは、かなり大きな変化だと言えるでしょう。タイトルページの導入の理由の一つが、最初のページの損傷を守るためというのも納得がいきます。中世の写本などを見ていると、最初のページが日焼けしていたり、黒ずんだりして、テキストが判読しにくくなっているものも少なくないです。advertising reasonsも、たしかにそうだろうと思います。

この引用の中で言及されているSmith (2000) の書誌情報は、Margaret M. Smith, The Title-page, its Early Development 1460-1510 (British Library and Oak Knoll Press, 2000) です。