創造するということ

宮永博史著 『セレンディピティ』(祥伝社、2006年)

偶然のひらめきに巡りあうための手引書です。ある種の行動パターンが幸運を引き寄せるという法則が、具体的な例をあげながら解説されています。(2011年)

以下は、印象に残った箇所の引用です。
「セレンディピティを実現するにはアイデアを発想することも大切ですが、その後の実行力も大切なのです。両者がともにあって初めてセレンディピティは完結するのです」 (p. 94)

目次

はじめに

1章 「セレンディピティ」って何だろう?

 偶然をとらえて幸運に変える力
 失敗のあとからやって来る「セレンディピティ」
 セレンディピティを遠ざける「玄人発想」
 シャープ創業者の直感力
 「偶然をつくり上げるような下地」
 地味な作業を来る日も来る日も続ける
 試料がもったいないからと、失敗したまま実験を続ける
 小さな変化も見逃さない
 「たまたま」の大切さ
 セレンディピティは、たまにやってくる気まぐれな小人さん
 同じところに留まっていてはいけない

2章 誰にも訪れる「セレンディピティ」

 ようやく日の目を見た「カミオカンデ」
 小柴先生の驚くべき行動力
 幸運はみんなのところに同じように降り注ぐ
 半導体産業を支えるニコンの露光装置
 自然を素直に観察する
 最初の一往復で、頭の中に400人の顧客リスト
 ほんの小さな心がけと努力
 当たり前のことを当たり前に実行する
 競合会社に、売れない理由を聞きに行く

3章 「無関係なもの」を関連づけてみる

 「トヨタ生産方式」の秘密
 無関係に見えるものの中に、関係性を見出す
 パートナーの勘違いが、世界的成果のきっかけに
 完全に壁にぶつかった酵素の研究
 完敗から、奇跡の大逆転を呼ぶ
 異分野のプロを集めろ
 研究開発のプロを、購買の責任者に任命する

4章 「素人発想」プラス「玄人実行」が有効

 はがれやすい接着剤
 誰も見たことのない新商品を成功させる
 「こんなことができたらいいな」から始める
 「玄人実行」なくしては、「素人発想」も実を結ばない
 職人の「しっくり」を、3ミクロンという数値に置き換える
 平均勤続6カ月、新人チームの発想
 大学で建築学を学ばずとも、偉大な建築家になれる
 妥協せず、あきらめず、継続する

5章 「想定外」を考えておくことの重要性

 「想定外」の機会のほうがはるかに大きい
 ポケベルが急速に利用客を減らした理由
 電話よりも、電信のほうが上位にあると考えた人たち
 「どうして私のところに売り込みにこないのですか?」
 「見えざる顧客」を見つけた者だけが生き残る
 オリンパスを支える内視鏡事業
 使う人が、最適な使い方を見出す
 他の人には見えない宝物に気づく人
 「邪道」が、暗礁に乗り上げた研究を救う
 「世の中は狭いですね」を実証する
 新製品を「さりげなく」口コミで広げる
 「弱い絆」が思いがけない広がりをもたらす

6章 「偶然のひらめき」が生まれる瞬間

 「蚊の針のように細い」という表現のわかりやすさ
 無理難題を可能にする町工場
 偶然のひらめきをモノにする「翻訳力」
 誰かが見つけてくれるのをじっと待つ宝物
 新しいアイデアは、どのようにして生まれるのか
 創造的な消化作業
 「ポートフォリオ」読書術で、未知と出会う
 毎月20ジャンル、20冊の読書
 ハーバード大学の紋章に込められた警鐘

7章 「論理的思考」とセレンディピティ

 コミュニケーション能力を磨くロジカル・シンキング
 漏れなく重なりなく考える
 全体の中でどういう位置づけにあるかを知る
 ピラミッド構造で考える
 「なぜならば」と「だから」
 ロジカル・シンキングの限界
 予測するということは、変化に気づくということ
 知識の枠や、思考の幅を広げるセレンディピティ

8章 セレンディピティが訪れる組織

 社員の絆が、組織のセレンディピティを生みだす
 なぜビッグスリーは低迷したのか
 社長人事にも、セレンディピティ
 アクシデンタルCEOは、異能の人
 宇宙から地球を見る発想で、顕微鏡を作る
 商品の気持ちになって開発する

あとがき

澤泉重一(著)『偶然からモノを見つけだす能力』(角川Oneテーマ、2002年)

セレンディピティについては、いろいろ深めてみる価値があると感じています。

まず定義のところですが、本書ではいわゆるシンクロニシティとの違いについて、「分かりやすく言えば、両者の違いは『セレンディピティ』が『能力』であるのに対し、『シンクロニシティ』が『現象』であることである」(p. 90)とされています。なるほどと納得がいく定義です。

能力であれば培うことができるはずです。本書を参考に考えてみると、規制に縛られないこと、不思議に思ったことをさらに掘り下げること、そして、受け取るトレーニンをすること、など、いろいろ手段はありそうです。(2012年)

以下は印象に残ったところの引用です。

「世の中の進歩を振り返ってみると偶然による突発的進歩が多い。これは、ある常識ができるとその常識の範囲でしか考えなくなることが大きな理由である。・・・このような場合は、多くの人々がかかわって計画を練れば練るほど、検討すればするほど、進歩の芽は摘まれてしまう運命にある。」(p. 82)

目次は、以下のようになっています。

まえがき
1 プロローグ
2 セレンディピティの誕生
3 寓話「セレンディップの三人の王子」
4 セレンディピティの生命力
5 偶然と察知力
6 身辺事例
7 セレンディピティの向上
8 セレンディピティで遊ぼう
あとがき

デビッド・バーカス著 『どうしてあの人はクリエイティブなのか?』(BNN、2014年)

創造性にかかわるさまざまな迷信を扱った本です。創造性とは特別なものではなく、かなり技術的なもので、個人的なものではなく、社会的なものだという視点が面白いです。

以下は、印象に残った箇所の引用

「2つの実験結果は、創造性に対する人間の見方について、なかなか興味深い事実を示唆している。どれだけ頭が柔らかい、あるいは頭が柔らかいと自負しているかに関係なく、不確実な状況では、誰の心にも創造性を嫌うバイアスがわずかにかかるらしいのだ。これは単に人は慣れ親しんだ方を好むとか、現状維持を求めるという話ではない。新しく革新的なアイデアを、人は無条件で嫌がるという意味なのだ。」 (p. 291)

目次

1章 「クリエイティブ」にまつわる迷信
2章 「ひらめいた」の迷信
3章 「生まれつきクリエイター」の迷信
4章 「オリジナリティ」の迷信
5章 「エキスパート」の迷信
6章 「インセンティブ」の迷信
7章 「孤高のクリエイター」の迷信
8章 「ブレーンストーミング」の迷信
9章 「団結」の迷信
10章 「制約」の迷信
11章 「ネズミ取り」の迷信

上田正仁(著) 『東大物理学者が教える「考える力」の鍛え方』(PHP文庫)

上田正仁(著)の『東大物理学者が教える「考える力」の鍛え方』が文庫本になって、手軽に入手できるようになりました。創造力も鍛えることができる、そして鍛えるための方法がある、というのが著者の主張です。

時代観というところでいうと、以下の箇所が目にとまりました。引用です。

「私は、今の日本は、過去に何度も経験した「破壊の後にやってくる創造の時代」に再び突入したと考えています」(p. 204)