記憶
William W. Atkinson(著)『記憶力』(サンマーク出版、2009年)
記憶力がよい人は得をしている感じがします。けれども本書は、その記憶を筋肉を鍛えるように鍛えることができるという発想に基づいていて、とても希望が持てると感じます。興味と注意力、そして記憶を引き出す努力、といったところがキーワードになりそうです。お金を貯めるだけで使用しないのと同じように、知識も蓄えるだけではもったいないと書かれています。頻繁に引き出して利用することを考えてみたいと思います。
本書を読んだ後にいろいろな物を観察してみると、たしかにこれまでは何も見ていなかったことに気づきました。ヘレンケラーの言葉も思い出しました。ただ見ているつもりになっていたようです。(2012年)
以下は、記憶に関係する歴史に言及した部分からの引用です。記憶は社会の変化によっても様相を変えていくという点で、学際的な研究テーマでもあります。
「ところが印刷技術の始まりとともに、一冊の本が何千部、何万部も印刷され、失くしてしまう確率が減ったことが明らかになったとき、口伝えで教えを授ける必要がなくなり、古代の記憶術も、ほとんど姿を消してしまいました。書棚に並んだ本を見ればわかることを、わざわざ覚えても意味がないと考えられたのです」(p. 127)
本書の目次は、以下のようになっています。
レッスン1 記憶とは何か?
記憶の本質とは、どんなものでしょうか?
レッスン2 注意力と集中力
最初に受け取ったときの印象の強さが、将来それを思い出せる度合いの強さを決めます。
レッスン3 印象が大切な理由
潜在意識は目の前の印象を残らず受け取り、巨大な貯蔵庫に保管します。
レッスン4 目は心の窓である
「目は心の窓」とはよく言ったものです。
レッスン5 耳は目よりも優れもの
受け取った印象を維持する能力には、大きな個人差があります。
レッスン6 聴覚を鍛えるエクササイズ
もっと聴覚を鍛えてください。
レッスン7 関連の法則とは?
人の思いや考えは、意志によって特定の方向に向けられていないとき、どのような動きをするのでしょうか?
レッスン8 印象に関する13の法則
覚えておいてほしい法則があります。
レッスン9 古代の記憶術に迫る
昔から伝わっている方法です。
レッスン10 「テン・クエスチョン・システム}
人は誰でも潜在意識の貯蔵庫に、膨大な種類の広範囲にわたる情報や知識を持っています。
レッスン11 数字とイメージ
数字に関する記憶力は、人によって差があります。
レッスン12 道に迷わない人になる
あなたは道に迷う人ですか?
レッスン13 人の顔の覚え方
人の顔は、なかなか覚えられませんよね。
レッスン14 名前の記憶術
人の名前を覚えるにはコツがあります。
小林標(著)『ラテン語の世界 — ローマが残した無限の遺産』(中公新書、2006年)
ラテン語についての本を「記憶」のカテゴリーに入れてみます。ラテン語の習得で記憶力が試されることもあるのですが、やはりこの言語は歴史とともに学びたい。歴史をたどることは、言語に秘められた記憶とも関係しているように思いました。ラテン語の背景がよくわかる本です。(2012年)
以下に、目次を紹介しておきます。
はじめに
1.ラテン語と現代
2.世界のなかのラテン語
3.ラテン語文法概観
4.拡大するラテン語
5.ラテン語と文学
6.黄金時代の文学者
7.白銀時代の文学者
8.ラテン語の言葉あれこれ
9.変わりゆくラテン語
10.ラテン語はいかに生き延びたか
11.中世ラテン語
12.終章 その後のラテン語