類義語のネットワーク
Thesaurus編纂の2つの形
Christian Kay and Katheryn Allan, English Historical Semantics (Edinburgh University Press, 2015) の第6章に “A brief history of thesaurus” (pp. 93-95) というセクションがあり、類語辞典の歴史について面白い記述があります。論点は2つで、1つ目は、現在のようにアルファベット順に単語を並べる辞書の方が後からの発達で、もともとは意味から語彙にアクセスするタイプの辞書の方が早く作られたということ。
2つ目の論点は、どのように類語辞典を編纂するかという点で、top-down方式とbottom-up方式が紹介されています。top-down方式は、まず世の中のさまざまなものや概念の分類を行い、ここに単語を割り当てていくという方法です。おそらくこちらの方が類語辞典の編纂としては一般的だろうと思います。
bottom-up方式は、歴史類語辞典として有名な、Historical Thesaurus of English (HTE)(およびこれをもとにしたHTOED)の編纂の方法で、史的辞書を使ってカードに語彙についての情報を書き出し、これをあとから整理することで分類が出来上がったというものです。大変な作業ですが、1965年にMichael Samuelsが着手したプロジェクトが結実したものです。Kay and Allan (2015) では、Samuels (1972) が “The required data exist in multivolume historical dictionaries like the OED, but they cannot be utilised because the presentation is alphabetical, not notional” (Samuels 1972: 180) と述べて、史的類語辞典の必要性に言及している箇所が紹介されています。
引用箇所の出典は、
Samuels, M. L. 1972. Linguistic Evolution with Special Reference to English. Cambridge: University Press.
タイトルからはわかりにくいのですが、かなり具体的に英語の歴史に踏み込んだ面白い著書、いろいろな場面で言及されるユニークな本です。
WordNet
現代英語の語彙のデータベースWordNetは、ダウンロード形式とオンライン上での検索の両方で利用できます。オンライン版の利用は、こちらから。thesaurusと似た機能を持っていて、例文も表示されますので、語法辞典のような使い方も可能です。また、WordNetをもとに語の意味の広がりをヴィジュアルに示してくれるツールとして、GraphWordsにもリンクを張ってみます。