現代英語を観察する — 法助動詞
現代英語の分析と教科書の比較
Ute Römberは、現代英語の実際の用法を観察しながら、一方でその結果をドイツで出版された英語の教科書と比較し、教科書で使用されている英語が英語の現状を反映したものであるかを論じる論文をつぎつぎに発表しています。そのうちの1つが以下のものになります。
Römber, Ute. 2004. “A Corpus-driven Approach to Modal Auxiliaries and their Didactics”, in How to Use Corpora in Language Teaching, ed. John McH. Sinclair, pp. 185-199. John Benjamins.
この論文では、Quirk et al. (1985:137)がcentral modal verbsとしてあげているcan, could, may, might, will, would, shall, should, mustにought toを加えて、10の法助動詞の分析が行われています。現代英語のデータはBNCです。
さまざまな指摘がなされていますが、それぞれの法助動詞の頻度については、will (‘ll), would (‘d), can, could, should, might, must, may, shall, ought toの順になり、canまでがかなり頻度が高いというのが目にとまります。比較の対象となったドイツの英語教科書の場合、法助動詞の現在形が多用されているようで、willとcanの頻度が際立って高くなっているようです。また、mustの頻度についても、実際よりも明らかに突出した高い頻度で使用されているということです。
教育の場面には習得の目的もありますから、一概に現状と同一でなければならないとは言えないと思いますが、現代英語を冷静に観察する視点の重要性は指摘されているのではないかと思います。このほか、論文では、たとばcanには’ability’, ‘possibility’, ‘permission’の意味がありますが、その分布がどのようになっているか、などの議論も展開されています。