英語の過去形と過去分詞形

地域方言の中に見られる過去形・過去分詞形の多様な形

現代英語の過去形・過去分詞形は、規則変化と不規則変化に分類され、不規則変化は学習者には若干厄介なものとなっています。規則変化動詞は大まかにいって古英語の弱変化動詞に由来し、不規則変化動詞の方は強変化動詞に由来します。強変化動詞の変化形には一定のパターンがあったので、完全な意味での不規則ではないのですが、少なくとも現代英語の枠組みでは不規則なものとして丸暗記をしてしまうのが現実的であることは事実です。

英語史のさまざまな段階で、もともと強変化動詞であったものが弱変化動詞のパターンに合流したり、もともと弱変化動詞であったものが強変化に見られる変化形に倣う形で不規則動詞になったものもあります。そのような意味で、英語の歴史全体を見た場合に、かなり不規則なことが起こっているのもまた事実です。

このような状況も関連して、現在もさまざまな変種の英語において、過去形や過去分詞形の形が揺れていることが知られています。Natalie Braber and Jonnie Robinson著の East Midlands English (De Gruyter Mouton, 2018) のpp. 90-91 にEast Midlands Englishに見られる過去形の方言形をまとめた表がありましたので、そこから標準的でない形を少し拾ってみたいと思います。

表ではまずzero pastとして、regularised past(現在形がそのまま過去形として現れる)の例として、come, give, run, sitが挙げられています。then they come backで過去形となります。次に、本来は不規則動詞であるにもかかわらず、-edを付けて過去形を作るものとして、drawed (< draw), knowed (< know), seed (< see), throwed (< throw) が挙げられています。that’s all you drawedといった感じです。I’ve seed as many as thirty clutchesという例も挙げられていますので、過去分詞もこのグループに集約されているようです。

次のカテゴリーは、generalisation of simple pastで、標準英語でいうところの過去形を過去分詞として使用するものです。broke, ate, fell, forgot, gave, spoke, wore, wroteが挙げられていて、I would’ve spoke というような感じになります。その逆のgeneralisation of past participle もあり、このカテゴリーの動詞は過去分詞形を過去形として使用します。ここで挙げらているのは、done, seen, stunkで、I done a Health Studies course などの例文が示されています。最後の other はその他になり、frozzen (< freeze), gotten (<get), gen (< gie ‘to give’), swolled (< swell) が挙げられています。例えば I’ve gotten over my obstacles といった感じです。

過去形・過去分詞形は、全体として見れば、古英語時代の動詞の体系が現代英語の体系の基盤になっていることは事実とは言え、なかなか奥が深い領域です。英語史は、そのヴァリエーションとともに歩んできたという側面があり、最後は規範の力を借りながら、現代英語の過去形・過去分詞形を定着させたと言ってもいいと思います。ヴァリエーションが現在も収束していないのは、ある意味で当然の結果だと言ってもいいでしょう。