コーパス言語学の潮流 — 20世紀から21世紀へ
Toshio Saito, Junsaku Nakamura, and Shunji Yamazaki (eds.), English Corpus Linguistics in Japan (Rodopi, 2002)
我が国において英語コーパス学会が英語コーパス研究会として発足したのは1993年です。それから約10年が経過したところで、本書が編纂され、Rodopi社のLanguage and Computers: Studies in Practical Linguisticsシリーズから出版されました。日本人研究者のコーパス言語学に関する多数の研究が世界に紹介される契機になった論文集です。英語コーパス学会の顧問でもあるGeoffrey Leechが序文を寄稿しています。本書の構成は、第一部がCorpus-based Studies in Contemporary English、第二部がHistorical and Diachronic Studies of English、第三部がEnglish Corpora and English Language Teaching、第四部がSoftware for Anlyzing Corporaとなっています。
家入も本論文集に、anyについての論文を寄稿しました。Helsinki Corpusを利用して中英語から初期近代英語にかけてのanyの発達を分析した結果をまとめたものです。論文の詳細については、こちらのページで紹介しています。
石川慎一郎、長谷部陽一郎、住吉誠(著)『コーパス研究の展望』(開拓社、2020年)
『コーパス研究の展望』は、開拓社の「最新英語学・言語学シリーズ」の第11巻として出版されたもので、20世紀から21世紀にかけてのコーパス言語学の変遷と、コーパスを利用した具体的な研究成果を紹介する著書となります。
第1章の「コーパス言語学の展開」と第4章の「コーパスと英語教育研究」は石川氏が、第2章の「コーパスと英語学 — 認知言語学的観点から –」は長谷部氏が、第3章の「コーパスと英語語法研究」は住吉氏が執筆を担当したとのことです。
コーパス言語学が英語学研究に導入されるようになってきてから今日までの分野としての変遷が明らかになるとともに、具体的にどのようなコーパスの利用が可能であるのか、など有用な情報を提供してくれます。また具体的な研究事例も多数含まれていますので、研究テーマを探る際にも、利用できる著書となっています。語法文法研究がそもそもコーパス言語学と極めて相性のよい研究分野であることはもちろんですが、認知言語学においても21世紀に入ってからコーパスを利用した研究が主要な流れとなってきていることなど、ツールとしてのコーパス言語学が各分野の研究の方向性にも影響を与えてきたことを本書を通して具体的に知ることができます。
なお、本サイトでも紹介している『文献学と英語史研究』(家入葉子・堀田隆一 著、開拓社、2023年)も同シリーズの別の巻になります。