語順についての考え方

田地野彰(編)『明日の授業に活かす「意味順」英語指導』(ひつじ書房、2021年)

ひつじ書房から『明日の授業に活かす「意味順」英語指導』が出版されました。著者の方から献本をいただきました。ありがとうございます。本の紹介をさせていただきます。

英語教育の場面で、文法用語を使用せずに「だれが、する、だれ・なに、どこ、いつ」などの意味順からアプローチするという考え方を多方面から紹介した本になります。正直なところ、文法用語は汎用性があるので、私個人としては、やはりあった方がいろいろな意味で言語学習が安定すると考えています。汎用性があるというのは、一旦習得してしまえば、語順が異なる別の言語を学習する際にも利用できる場合が多いですし、言語習得に限らず、言語について分析的に話をするときにも役立ちます。

ただ、本書が述べているところにも重要なメッセージがあると感じました。言語では情報をどのように伝えるか、という内容の部分が語順に影響する場合が多いですから、語順とは何か、それを内容の面から考えることはとても大切だと思います。

本書には英語の語順を古英語から現代英語までの歴史的視点で扱った章もあります。第4章の「英語史からみた『意味順』」(高橋佑宜著)英語の語順は時代の変化とともに大きく変容してきました。そして、そこには情報をどのように語順に反映させるかという点で、英語のあり方そのものが変容してきたことが関係しています。英語をこのようにダイナミックな視点から観察することで、話者が聞き手に(読み手に)情報を伝える上で、どのようなメカニズムが働いているかをよりよく理解することができると思います。