食の文化 — 塩、蜂蜜

村上譲顕著 『日本人には塩が足りない』(東洋経済新報社、2009年)

減塩ばかりが意識される中、少し異なる角度から塩のことを考えるための本です。塩の効果に焦点が当てられていて、ちょっとびっくりの情報もありました。

本のテーマにかかわる部分を引用してみます。

「今の日本人はみんな、塩についてとんでもない誤解をしているのです。塩は人間の体に欠かせないものです。特別な場合を除き、減塩などせずにしっかりとらなければいけないのです。」 (p. 3)

目次も掲載しておきましょう。

 序章 塩で健康を取りもどした私の体験 

 第1章 病気の原因は「体内環境」の乱れにあった
 第2章 「塩をとれば高血圧になる」は常識のうそだった
 第3章 塩不足が日本人の健康をそこねている
 第4章 塩でもっとキレイに、健康になる!
 第5章 塩の上手な選び方・とり方

 付記 「自然塩復活運動」と「自然海塩」の物語

マーク・カーランスキー(著)『塩の世界史――歴史を動かした小さな粒』

塩が世界史の中でどのような役割を果たしてきたか、がとにかく膨大な情報とともに提示されています。スケール感がとても大きいです。上下二冊の構成になっていますので、かなり気合を入れて読まないといけません。

前田京子(著)『ひとさじのはちみつ — 自然がくれた過程医薬品の知恵』(マガジンハウス、2015年)

蜂蜜の効用を各方面からエッセイ風に解説した書籍です。身体にいいことはなんとなく理解していましたが、思った以上に奥が深い世界だと再認識しました。蜂蜜の種類もさまざまで、それぞれに違った特徴があること、摂取の方法も、ただ食べるだけではないというのが新鮮でした。

傷をいやす効果だけでなく、歯磨きや目薬としての効用についての記述には、さすがに驚きました。目薬としての利用は少し勇気がいるかもしれません。一方、歯磨きの方なら、なんとなく試してみることができるような気がします。

また蜂蜜の甘さが気になっていましたが、こちらはそれほど気にする必要はなさそうだというのもありがたいことです。いずれにしても、本書を読んだあと、さっそく蜂蜜を購入して、その世界が少しずつ広がりつつあります。

モーリス・メーテルリンクからの引用もありましたので、以下に記載してみます。

蜜蜂は自分たちが集めた蜜を誰が食べるのか知らない。同様に、わたしたちが宇宙に導き入れる精神の力を誰が利用することになるのか、私たちは知らない。(モーリス・メーテルリンク『蜂蜜の生活』)

(2023年10月)