子どもたちの英語学習

田地野彰(編著)『小学生から知っておきた英語のハテナ』(Jリサーチ出版、2024年)

小学生から英語を学ぶということととは別に、小学生から英語について学び、言葉に関心をもつことを前提とした本書は面白い発想だと思います。特に英語の歴史(本書第2章)のような、一見するとバックグラウンド的な要素にもしっかりと光をあてながら、広い視野をもって言語を見る姿勢を養うのは、好奇心の強い子供たちを相手にするからこそ大事にしたいところです。

その意味で本書は、多様な角度から英語に焦点を当てることに成功しています。とても分かりやすい日本語で、かわいらしいイラストもたくさん含まれていますので、子供たちも思わず手に取りたくなるのではないかと思います。(2024年)

バトラー後藤裕子(著)『英語学習は早いほど良いのか』(岩波新書、2015)

英語学習では「臨界期」が問題になることが多い中、この本では、臨界期というものがそれほど単純ではないこと、現実に多様な英語が存在する中で、「完全な」発音を身につけることに膨大なエネルギーを使うことよりも本当の意味でのコミュニケーション能力を身につけることの方が重要ではないか、という議論がなされています。臨界期については、以下ののように書いてありました。

<引用>
「まず、臨界期がどの言語分野(音声、文法、語彙など)に存在するのかという点で、研究者により主張が異なる。音声面でしか臨界期は存在しないと主張する研究者もいれば、言語分野別に複数の臨界期が存在すると主張する人もいる。また、臨界期の存在を主張する研究者の間でも、その時期については、かなりのばらつきがある」(p. 54)