海外から日本へ

Willem A. Grootaers著 『それでもやっぱり日本人になりたい』(五月書房、1999年)

神父として来日し、日本を愛したベルギー出身の言語学者 Willem A. Grootaers(愚老足)氏の自伝ともいえる読みものです。「Grootaers氏がJunshin Forum という雑誌に寄稿した論文を読みたいので送ってほしい」と頼まれて、Junshinがどのような漢字表記のJunshinなのかを確かめるために手にした本ですが、文化の違いを楽しみながら与えられた生を精一杯生き切る姿には共感できる面も数多くありました。(2011年)

少し長いですが、目次を掲載してみます。

第一部 日本への道
生い立ち
 二つのことばで育った
 宗教戦争
 言語戦争
 家族の中の言語戦争
 戦時下の子ども時代 (二つの情景、爆撃と駐留兵、夏休みの爆風、後で聞かされたこと、初恋の結末)
神父への道
 苦行
 神への壁 (第一の壁、第二の壁、第三の壁、第四の壁、中国へ)
愛しき中国
 相棒シロは蹴飛ばしの名手
 日本軍と共産党ゲリラと匪賊の関係
 匪賊の首領は粗暴なる好青年
 無言の抵抗
 恐怖のつり橋
 憲兵隊長の鈴木さん
悲しき中国
 収容所の二つの事件
 今度は北京で軟禁生活
 忘れ得ぬ二人の医師
 輔仁大学での教え子
神と学問のなざまで
 テイヤールが私を解放してくれた (テイヤールとの出会い、人類の統一の一点は愛、生涯をかけた二つの仕事の結合とは、なぜテイヤールは異端視されたか)
 信頼するものはばかげたことか

第二部 日本はすばらしい
日本へ
 神を伝える者として
 二人の恩人
 大学こぼればなし (国際基督教大学、法政大学、清泉女子大学、上智大学)
日本寸描
 至福
 詩人の国
 簡素な中の幸せ
 架空のイメージと実際の日本
 働く喜び
 名前をたくさん持っている
 音痴の記録 (音痴の系譜、思い出の曲、クラシック王国日本)
 音痴の音楽活動
日本全国自転車旅行
 三十六年間日本縦横無尽
 浮浪者と間違えられて
 「家内は日本人です」の効能
 ついに日本人になった
 「自転車に乗る苦しみ」
日本人はすばらしい
 真の女傑
 おばあさんの墓参
 ハッピーエンドは離婚
 船を見ていた少女――スウェーデン婦人記者の日本旅行記より (船を見ていた二人連れ、愚先生に会う、少女に会う、二人の結論)
日本語と国際人
 「おくに」はどちら?
 国際会議を百倍おもしろくする方法
 日本語には未来形も複数形もある
 日本語の特徴は心と魂
 日本人の英語
 国際人づくり
 日本人は国際人である

第三部 生きていることはすばらしい
 智と愚 (智をとり愚を捨てた愚、人格尊重という「愚」)
 火星人のいたずら (喜劇と悲劇の始まり、パニックはこうして起こった、パンドラの箱、科学の副作用)
 科学は冷たく人間の心はあたたかい (医学では教えないこと、石の法則、医師の悩み、人間として)
 幸福の島
 ひざまずく人は何を考えているのか
 完全であるのは下品なことか
 生きるということ

第四部 終章
 二つの勲章 (日本の勲章、ベルギーの勲章)
 死の淵で
 お通夜の翌日
 本当に日本人になれるかもしれない
 蛇足

アレックス・カー(著)『美しき日本の残像』(朝日文庫、2000年)

著者が各地で日本家屋の復旧事業に取り組んでいる様子を特集した番組を見て、『美しき日本の残像』を読みました。日本での著者の様々な経験、さまざまな人々との交流の歴史が詳しく紹介されています。日本家屋の復旧への取り組みだけでなく、古物収集についても詳しいです。日本の家屋については、以下の部分が印象に残りました。最近の私たちの住まいは、物が多すぎるように思います。海外の住まいと比較しても、とても多いと思います。

以下は引用です。

「それは、いかに素晴らしい民芸品であろうと、それを入れるより何も置かないほうが家はより美しいということです。十八畳の真っ黒い板張りの居間をそのままにしておくことにより、能舞台のような貫禄が出てくるのです。物を置くと雰囲気はぐんと落ちてしまいます」(p. 39)