Synchrony vs. diachrony

言語学の基本概念なので、どこにでも定義は見つかるのですが、K. Kay and K. Allan, English Historical Semantics (Edinburgh, 2015)の説明が分かりやすいと思ったので引用してみます。

”Synchronic research focuses on language at a particular point of time, or, more accurately, proceeds as if time is not a factor in the study. The term is often used as if it referred solely to the study of synchronic study of a historical period. A diachronic study, on the other hand, considers a longer period and takes full account of the passage and effects of time; …” (p. 3)

問題はここからで、たしかにこの二つの概念はコトバに向き合うときの基本中の基本なのですが、これをおさえた上での応用として、実際には、この両者は厳密に区別し過ぎない方がよいという見方が広がってきている点にも注意したいです。

この変化の背景には、1990年頃から言語の研究においてコーパスの利用が急速に広がってきたことがあると思われます。データの量が増加したことで、言語をsynchronicな視点から見る場合でも、言語のvariationを無視することが難しくなってきました。synchronicなvariationがいずれは、diachronicな言語変化につながっていくことが少なくありません。両者が連動してる場合が多いのです。人びとの関心が言語の「変動」に向かうようになってきたことで、synchronyとdiachronyの伝統的な区分に対する見方も変わってきたものを思われます。

一例を示すと、Richard Hogg は The Cambridge History of the English Language (Cambridge, 1992-2001) の巻頭の序文で、

“One crucial principle which guides The Cambridge History of the English Language is that synchrony and diachrony are interwined, and that a satisfactory understanding of English (or any other language) cannot be achieved on the basis of one of these alone”

と述べています。