Yoko Iyeiri, Hiroshi Yadomi, David Selfe & Jeremy Smith (eds.), Variational Studies on Pronominal Forms in the History of English (Kaitakusha, 2022)
英語の代名詞の史的変化を扱ったコンパクトな論文集
英語史研究会の冊子シリーズの第9号になります。英語史研究会のホームページはこちら
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英語の代名詞の史的変化を扱った論文集が、開拓社から出版されました。編者は、Yoko Iyeiri, Hiroshi Yadomi, David Selfe & Jeremy Smithで、このうちのYadomi, Selfe, Smithの3名はスコットランドのグラスゴー大学の関係者です。Iyeiri(家入葉子)は、グラスゴー大学での学びの経験はありませんが、やはりスコットランドのセント・アンドルーズ大学で博士課程時代を過ごしました。
論文集には7本の研究論文が収録されています。扱う代名詞の幅は広く、人称代名詞、指示代名詞、関係代名詞の重要な論点が議論されています。時代としては、中英語から20世紀までが対象となっています。
代名詞は高頻度でありながら、英語の場合には、大きな変化を経験しながら今日に至った品詞の一つです。現代英語の背景にどのような歴史ががあるのかを見るのにとても効果的なテーマの一つです。
特に二人称代名詞は、現在、多くのヨーロッパの言語の中で維持されている敬称と親称の使い分け(yeとthou)が、英語では歴史的な過程を経て失われてきました。この点に焦点を当てた論文も、含まれています。後半の4つは、さまざまな形で二人称代名詞にかかわる問題を扱っています。合わせて読むと、二人称代名詞が数百年にわたって変動してきた様子がよくわかります。
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目次
Introduction (Yoko Iyeiri, Jeremy Smith, Hiroshi Yadomi & David Selfe)
Syntactic Function and Pronominal Form in Late Middle English (Jeremy J. Smith)
From Tho to Those in Fifteenth-Century English (Yoko Iyeiri)
Wh to-infinitive Constructions in Early Modern English Drama with Special Reference to Shakespeare (Shota Kikuchi)
Strategies of Power and Distance in the Trial Record of King Charles I: Combinations of Personal Pronouns and Modality in Speech Acts (Michi Shiina & Minako Nakayasu)
Macro- and Micro-Pragmatic Approaches to Thou and You in John Donne’s Sermons (Hiroshi Yadomi)
Thou and Ye in Nineteenth-Century American Novels (Masami Nakayama)
The Use of THOU in George Bernard Shaw’s Plays (Ayumi Nonomiya)
Index
関連情報として、編者の一人のJeremy Smithにはその近著に、Transforming Early English: The Reinvention of Early English and Older Scots (Cambridge University Press, 2020) があります。やや専門的ですが、英語史の視点からとても面白く、是非読んでみたい本です。