ライブラリとセキュリティ

大英図書館のデジタルシステム

2023年の秋ごろからBritish Libraryのデジタルコレクション関係のリンク切れが起こり始めて、多少の不安を感じながらロンドンに向かったのは11月でした。British Libraryの受付でいつものようにライブラリカードを更新しようとしたところ、大規模なハッキングにあったため、図書館自体がまったく機能不全に陥っているとのことでした。この件が公式に発表されたのは、その翌日のことでした。

ライブラリは公共的な施設で、一見すると富とは無縁のように見えますが、実は世界に一点しかないような大変高価なものを多数収蔵している場合も少なくありません。それが失われるようなことがあると、世界的な損失になってしまいます。大変な富の宝庫だということもできます。近年はこれらの収蔵品をデジタル化することで世界的に公開していこうという流れも顕著になってくる中、そのデジタル化されたコレクションそのものが社会的に大きな財産になっていることもあります。

そうなると、これらのシステムが何らかの形でハッキングの対象になるということも当然ながらあり得ることでしょう。ライブラリの管理には、セキュリティという概念が、一般に考えられている以上に求められているように思います。写本等の管理には専門的な技術を持った人が必要ですし、物理的に管理できる環境も必要ですから、どうしてもコレクションの多くが世界の拠点的ないくつかのライブラリに集中する傾向も見られます。今後はセキュリティの観点から、集中と分散の考え方も必要になるかもしれません。デジタル形式の財産についても、同様です。一か所が機能不全に陥るとほとんど回復が不可能というのでは、あまりにも危うい感じがします。「持つ」ということが、どれほどの責任をコストを伴うのか、ということをあらためて感じた気がします。