脳の不思議

Jille Bolte Taylor著 『奇跡の脳』(新潮社、2009年)

脳卒中を経験した脳科学者の体験記です。左脳の損傷にともなう経験を自ら分析した著書。右脳にどのような働きがあるのかを具体的な経験を踏まえて解説したもので、なかなか貴重な情報だと感じました。(2012年)

エネルギーを与える人と奪う人がいるというのはなんとなく感じていたところですが、この著者も以下の引用のように語っています。

<引用>
「脳の主な機能が右側へシフトしたことによって、わたしは、他人が感じることに感情移入するようになっていました。話す言葉は理解できませんが、話す人の顔の表情や身振りから多くのことを読み取ることができたのです。エネルギーの動きがわたし達に与える影響については、特に注意を払いました。エネルギーを与えてくれる人がいるかと思えば、エネルギーを吸い取る人もいることに気づいたのです」 (p. 80)

目次もあげてみました。

はじめに 心と心、脳と脳
第1章   脳卒中になる前の人生
第2章   脳卒中の朝
第3章   助けを求めて
第4章   静寂への回帰
第5章   骨まで晒して
第6章   神経科の集中治療室
第7章   二日目 あの朝の後で
第8章   GGが街にやってくる
第9章   治療と手術の準備
第10章   いよいよ手術へ
第11章   最も必要だったこと
第12章   回復への道しるべ
第13章   脳卒中になって、ひらめいたこと
第14章   わたしの右脳と左脳
第15章   自分で手綱を握る
第16章   細胞とさまざまな拡がりをもった回路
第17章   深い心の安らぎを見つける
第18章   心の庭をたがやす

John J. Ratey著 『脳のはたらきがすべてわかる本』(角川書店、2002年)

脳にかかわるさまざまな問題が、日常的な言葉で、わかりやすく解説されています。脳と運動の関係、脳と音楽の関係など、脳と身体との連携が重視されていて、とても参考になりました。(2011年)

以下は、著書からの引用です。
「地球上の生物である人間はこの先、意識をますます進化させるのか。不運にも命にかぎりのある私たちには知るよしもないが、遺伝子はおそらくそうなることを望み、はるか未来にはその夢も実現するに違いない。」 (p. 151)

目次は、比較的簡潔で、以下のようになっています。

第一章 発達
第二章 知覚
第三章 注意と意識
第四章 運動
第五章 記憶
第六章 情動
第七章 言語
第八章 社会脳
第九章 四つの劇場
第十章 ケアと栄養

アンリ・ベルクソン(著)『創造的進化』(ちくま学芸文庫, 2014年12月)

やや難しいながら、読み応えがありました。人間そのものが変化の存在、行動の存在であるという視点からあらゆるものを見ていく必要があると感じました。(2014年)

以下は、印象に残ったところの引用です。

「脳のメカニズムはまさに、過去のほぼ全体を無意識の中に押し返し、現在の状態を照らし出すことができるものの、準備している行動を助けることができるもの、つまり有用な仕事ができるものだけを意識の中に入れるように形成されている。せいぜい余分な記憶が、少し開いた扉から、不法侵入してくることがあるくらいである。それらは無意識の使者で、われわれが知らずに引きずっているものを知らせる」(p. 22)

目次は、以下のようになっています。


第1章 生命進化について 機械論と合目的性
第2章 生命進化の分岐する諸方向 麻痺、知性、本能
第3章 生命の意義について 自然の秩序と知性の形式
第4章 思考の映画的メカニズムと機械論の錯覚 諸体系の歴史についての手短な考察、実在的な生成と疑似進化論主義