少し個性的な英語史

Jeremy Smith, An Historical Study of English: Function, Form and Change

本書は、一般的な英語史のタイトルがついていますが、淡々と英語史を語るという感じではなく、著者の創造力の豊かさがちりばめられています。出版から時間がたっていますので、入手が難しいのではないかと思っていました。しかし、Kindle版もありますし、ハード、ペーパー、中古新品等、いろいろあるみたいです。すでに英語史の一般的な知識を身につけた人にお薦めの本です。

サイモン・ホロビン(著)『スペリングの英語史』

原著のタイトルはDoes Spelling Matter?です。堀田隆一先生の翻訳による『スペリングの英語史』はまさに、本書の内容をよく表しています。コンパクトな本に見えますが、英語史全体を見渡した壮大一冊です。英語のスペリングは音との関係が複雑でとてもわかりにくいといわれます。その背景、そしてイギリス人が以下にスペリングにこだわってきたか、いかにこだわらずにきたか、などさまざま視点が盛り込まれています。原著でも読みましたが、日本語でも読んでみました。どちらもお薦めです。

Strang, Barbara M. H., A History of English (1970, London: Methuen)

少し古いですが、イギリスでは少し前まで標準的な英語史の本とされていたものです。そのため、英語史研究者で少し世代が上の人たちは、この本をまず紹介する傾向があります。個性的なのは、(当時の)現代から時代をさかのぼる形で記述がなされていることです。英語史といえば、一般に英語のルーツに始まり、そこから古英語、中英語、近代英語というように古いところから現在まで、と時代を追いながら記述を進めるのが一般的ですが、この本では、その方向が逆向きになっています。私たちの時間認識はどうも古いところから現在へと話を進めるのに適しているようで、逆方向の記述は時代感覚がつかみにくいというという意見が多く、結局、この記述方法は、本書が書かれたあともそれほど広まらなかったようです。しかしながら、現在を起点としていることは、著者の中で英語史と現代英語の連続性が強く意識されていたことと関連しているのではないでしょうか。現在では、英語史と現代英語の連携は広く意識されるようになってきた考え方ですが、1970年という時代を考えると、ある意味で本書は先駆け的な意味を持っていたのではないでしょうか。当時はまだ、英語史といえば、古英語・中英語・初期近代英語を極める学問という色彩が強い時代でした。