脳と身体性
S. Blakeslee & M. Blakeslee(著)『脳の中の身体地図』(インターシフト、2009年)
脳について、特に身体性に焦点をあてながら、分かりやすい言葉で解説された著書です。イメージトレーニングが非常に効果的であること、道具を操ることがどれほど脳と関連しているかなど、大変学ぶところが多いと思いました。重い荷物を二人で持ち上げるなどの作業もこれまで力の問題だと思っていましたが、考えてみれば、本書が語るように、脳との関係で特筆すべきことのように感じてきます。(2011年)
以下は、ダンストの関係について語った部分で、たしかにそうだと思いましたので引用します。
「プロのダンサーは、身体を空間に延長して他人の身体に働きかけ、触れ合うのが舞踊だと言う。『空間に漏れ出し』、目に見えない空間を感じ取らせるのが舞踊なのである」 (p. 207)
以下は、目次です。少し長いですが、全体を載せておきたいと思います。
はじめに–身体化された脳
1章 身体の曼荼羅
身体の窓
知能は身体を必要とする
Column ボディ・マップと大脳皮質、曼荼羅とは?、体性感覚に注目!
2章 脳の中の小人
顔の隣は手
動物の身体感覚って?
Column 大勢いるホムンクルス、運動アウトソーシングの拠点
3章 ボディ・マップの決闘
ボディ・スキーマとボディ・イメージ
自分に身体のあることがわからない
ばらばらのマップを統合する頭頂葉
身体についての思い込み(ビリーフ)
ウォップル・ボードの知恵
眠れるトラを起こす–ソマティック・サイコロジー
拒食症を治したキャット・スーツ
鏡に映る自分が許せない
Column 脂肪と脳、体型と文化、文化的な思い込み(ビリーフ)と病気、鼻がピノキオのように伸びる!、前庭情報と足の裏
4章 脳も運動中
驚くべき効果
熟練の技と脳
運動イメージ法だけがマップを変える
ペナルティ・キックをなぜ確実に決められるのか?
うまいゴルファーが駄目になるとき
運動しない子どもの脳の異常
Column 身体に組み込まれたロボットの手
5章 狂った可塑性
”イソップス”という悪魔
目になる舌–運動マップの修復法
体部位局在の崩壊
マップは絶えず変化する
幻肢の謎
脳卒中による麻痺の回復
ボディ・マップが混乱する前に
ミラーボックスによる運動機能の改善
Column 疾走するエイミー・マリンズ、口に小石を詰め込んだ雄弁家、盲目の画家は見ている
6章 壊れたボディ・マップ
自分の手が自分の首を絞める
四肢切断に焦がれる人々
多すぎる手足
不思議の国のアリス症候群
アフォーダンスと失行症
7章 身体を包むシャボン玉
ここから出して!
風景の半分が消える
多感覚ニューロンと錯覚
くすぐるまねだけで、なぜ笑いだす?
オーラや金縛りを科学する
ドッペルゲンガーの正体
体外遊離を起こす実験
文化が知覚を変える
場所細胞とグリッド細胞
”抱きしめ細胞”と”しり込み細胞”
心霊治療はなぜ効くのか?
Column 腕が散歩に行っている、半側無視の治療法、自分をくすぐれないわけ
8章 サルからサイボーグへ
能書家と道具を使うサル
アメーバのように膨らむペリパーソナル・スぺース
石器時代のサイボーグ
へそから伸びた触手–ビデオ・ゲームや治療法の未来
アバターに左右される人格
Wiiからマルチ・ホムンクルスへ
Column 進化とボディ・マップ、言語と数の起源、3D酔い、リハビリからポルノまで
9章 鏡よ、鏡
ミラーニューロンとSTS
テレパシー?
ダンスを観ると、脳も踊る
人類を進化させた最大要因のひとつ
空間の多様性の共有
人間のだまされやすさ
他人の身になる能力
Column 犬の言葉を読み取る、自閉症とミラーニューロン
10章 心と身体が交わる場所
島皮質–内臓感覚と情動の源
人間の脳だけが行う統合
熱い理性
痛みと情動
痛みを鎮める最新治療
Column 神経系の片割れ、官能的感触の大切さ、直感細胞と食べ物、痛みは冷やすとなぜ消える?
あとがき–”私”とは錯覚なのか?