19世紀という時代
山名淳(著)『「もじゃぺー」に<しつけ>を学ぶ』(東京学芸大学出版会、2012年)
タイトルに魅了されるだけでなく、内容も深く考えさせられる本です。献本をいただき、ありがとうございます。本の紹介をさせていただきます。
本書は、こわいけれど面白い絵本のお話です。19世紀という時代を考えると、このような絵本の誕生も理解できるような気がしました。
どの時代もそれぞれに大きな変化を経験するわけですが、あとから振り返ってみると、その変化に対する社会の反応に何かしたら特徴が浮かび上がってくるのが面白いです。現在もまた大きな変化の時代の一つだと思います。日常の時間は普通に経過しているわけですが、あとから振り返ったときには、一つの特徴を持つ時代として切り取られていくのでしょう。(2013年)
以下は、絵本の時代背景についての説明部分の引用です。
「たとえばJ・J・セイフェルスバーグによれば、『文明化』の過程で培われてきた「適切」な振る舞いと『不適切』な振る舞いを区別するコードが支配的であったのはかつて宮廷社会でしたが、ドイツの場合、19世紀になってそれが社会の構成員の大半を占める人たちに急激に波及し始めたとされます(Savelsberg 1996; Koenneker 1977)。そうした『文明化』の波及時代に、『もじゃぺー』は誕生しました」(p. 74)
目次は、以下のようになっています。
はじめに
第一章 『もじゃぺー』という不思議な絵本
コーヒーブレイク1 フランクフルトと『もじゃぺー』
第二章 だれが『もじゃぺー』をつくったのか
コーヒーブレイク2 日本と『もじゃぺー』の意外な縁
第三章 もじゃぺー、よい子になる
コーヒーブレイク3 『もじゃぺー』と国際子ども図書館
第四章 抵抗するペーター――『もじゃぺー』のもう一つの顔
コーヒーブレイク4 『もじゃもじゃペーター』類似本収集悪戦奮闘記
第五章 <しつけ>の世界を哄笑するペーター
コーヒーブレイク5 パウリちゃんは実在したか――現実と創作のあいだ
おわりに