聖書の世界

橋本功・八木橋宏勇(著) 『聖書と比喩』(慶應義塾大学出版会、2011年)

専門分野を異にする二人の著者による共著の特徴がよくあらわれています。現代の視点を交えながら、歴史の長い聖書の世界が展開します。

<引用>
「厳しいパレスチナの冬にあって、アーモンド耐寒しながらも生育しており、その鮮やかで美しいピンク色の花の開花は、新たな季節の到来を知らせる歓喜の瞬間だったのでしょう。・・・この語は「目覚める」という意味を表す動詞から派生した名詞です」(pp. 120-21)

目次を見るだけでも、著書の雰囲気が伝わる感じがしますので、以下に記載してみました。

目次

第一部 聖書の扉を開く
 『旧約聖書』の世界
 『旧約聖書』と古代世界
 子音文字の記憶
 現代に伝わるヘブライ語の響き

第二部 メタファの扉を開く
 天地創造と「光」
 「概念」と日常に溢れる比喩

第三部 メタファを通して聖書の扉を開く
 『旧約聖書』のメタファ
 翻訳とメタファの変容

付録 聖書の比喩表現分析リスト

『聖書の英語 — 旧約の原点から見た』(英潮社、1996年)

橋本功氏には、関連の著書として、『聖書の英語 — 旧約の原点から見た』もあります。こちらの本も大変お薦めです。日本語や英語の聖書を読んでいただけでは見えてこない、聖書に特徴的な語法などをヘブライ語の語法に照らしてみると腑に落ちることがあります。聖書を学ぶ際に、ラテンを参照したり、新約聖書であればギリシア語を参照することは専門家の間では普通に行われていますが、ヘブライ語となるとより専門的なトレーニングが必要になります。その点でも、英語学研究者でありながらヘブライ語を得意とした著者の強みが活かされた著書だということができるでしょう。