テキストの抜粋がセットになった英語史
Jeremy Smith, Essentials of Early English (2023, Routledge)
Jeremy Smith著の Essentials of Early English: An Introduction to Old, Middle, and Early Modern English が改訂され、新たに出版されました。出版年はすでに、2023年になっています。「少し個性的な英語史」のところで紹介している同著者の An Historical Study of English: Function, Form and Change がやや難しい英語史であるのに対して、ここで紹介する Essentials of Early English は、入門者にも読みやすい比較的やさしい英語史になります。
タイトルが示す通り、扱う内容は基本的に古英語から初期近代英語までとなります。近年の英語史研究で、後期近代英語期の言語変化に注目が集まっていることを考えると、少し物足りないと感じる面もあるかもしれませんが、英語史の基礎となる部分がしっかりと抑えられているので、英語がたどった変化の歴史を追うことができ、英語史のカテゴリーの中に入れることができる著書だと思います。実際、初期近代英語期までに起こった重要な言語変化は、英語史の中心的な部分を構成しているということができます。
近年は、英語史研究のトレンドの変化により、これまであまり注目されてこなかった後期近代英語期以降に関心が集まってきていて、そのこと自体はとても良い傾向なのですが、一方で、古英語から初期近代英語期に、英語の性質そのものを書き換えるような重要な変化が次々に起こった事実をもう一度考え直すことも重要だと感じます。
大変読みやすい英語史であると同時に、後半には、かなりの分量のテキストの抜粋がついていて、ここに掲載されている古英語、中英語、初期近代英語の文献資料の解読にも力を入れながら読むと、中上級者にも適した英語史の本にもなると言えます。ニーズに合わせて、自由に使い分けができるようになっています。
裏側のカバーに推薦文を執筆させていただきました。